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O~必要不可欠要素~

ヲタクブログです。 絵は無断で持ってかないでください。 ついったーでも呟いてます→wataame1gou シブ垢→523874

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唐突なんだが、オレには特殊性癖なるものがあるらしい。アルミンによると、オレは人の手に対する執着が普通のそれよりすごいんだそうだ。そう言われても、オレとしてはただなんとなく、あ、きれいだなって思った手を目で追ってたとかその程度だと思ってたんだけど。

「だったらなんで今エレンは僕の手を撫でてるの」

溜息をつかれてしまった。いいじゃんか、昔から何となくアルミンの手は柔らかそうで目の前にあるとつい自分の手でポンポンと持ち上げたり触ったりしていた。アルミンも特に抵抗なくそのままにさせてたから別にいいのかと思ってたんだけど、嫌だったんだろうか。

「嫌だったら僕だって手を払うなり嫌だって口に出したりしてるよ。エレンは手を持っていたずらするわけでもないし、悪意を持って何かしたりするわけでもなかったからね。でもそれだって普通はしないよ」
「そうなのか?」
「そうなの。僕らの年齢でそこまで他人の手を触ろうって執着はあんまりしないと思うよ。人寂しいとかあるのかな?って思ったこともあるけど、エレンはよく人の手を目で追ってたから多分本当に手が大好きなんだろうなって」
「ううん?そうなのか…」

あまり自覚していなかったけれど、アルミンが指摘するのならそうなんだろう。

「でもなんで今さらそんなこと言ったんだ?」

だってオレの手フェチ?って昔からの癖みたいなもので、アルミンからしたら許容出来る些細なことだったから指摘しなかったんだろう。今になってわざわざ言ってきたって何か問題でもあったんだろうか。

「…無自覚だったんだね。さっきからエレン、」

ジャンの手をガン見してるじゃないか。

視線の先には確かに袖をまくったジャンの肘の下から手先が水にさらされている。ちなみに今オレたちが居るのは訓練兵団の寮の裏手にある井戸近くの水場だ。ここで交代で洗濯が出来るんだが、今回ちょうどオレ達の番が回ってきて洗濯しているところで、目の前の同じ組み分けだったジャンもオレもアルミンも、他にも数人洗濯している。オレも手早く自分の服を洗っていたんだけども、どうやら自分の洗濯物よりジャンの方を見ていたらしい。
少し視線を上げると、ジャンが何だコイツといった顔でオレを見ていた。

「おい、死に急ぎ野郎。…とりあえずさっさと洗濯終わらせろ、後ろがつかえてきてるから」

ほんの少し言い淀んだジャンがここで無駄口叩くより先に用を済ませろとツッコミを入れてきた。オレは慌てて洗濯物をすすいで洗い桶を抱えた。

先に歩くジャンの脇に抱えた洗い桶を持つ手に目が行っている事にアルミンが気付き、思わず溜息をついていたことにオレは気づいていなかった。


あの後移動して洗濯物を干して朝食のために食堂に移動したオレ達はミカサと合流してジャンと別れて食事の席についた。ジャンとしてもオレの無遠慮な視線について思うところがあるのか突っかかりもせず、するりとオレ達と離れた場所に座る。オレもオレで指摘されて気付いたくせにほとんど無自覚に目を向けているのがジャンの手だったと気づいて自分で自分の癖に動揺していた。ミカサがオレに話しかけていたのも生返事しかしてなかったらしい。

「どうしたのエレン、今日は私の手を見ないの」
「え、え?オレもしかしてミカサの手も見てたのか?」
「うん、エレンはアルミンの手は触るけど、私の手には触れないからせめてきれいにして触ってもらえないかって爪を整えたりしてる…でも、今日は見てくることすらしてくれない…」
「あ、ああ、ごめんミカサ」

ここでの謝罪は無自覚にミカサの手を見ていた事に対してのものだったんだが、ミカサはなぜかそのままオレの手に触れようとしてきたからオレは「先に飯を食えよ」と自分の手を目の前のパンに向けてミカサのその手を避けた。
(その後ろで激しくしょんぼりするミカサとそれにうろたえるアルミンは見えていない)
自分の無自覚の癖を知って動揺しているっていうのに、それでもオレはちらりとジャンの手元を覗く事をやめられないでいた。

「それにしたってエレン、この前あんなに皆にそれぞれの手について語ってたっていうのに手フェチだって自覚してなかったなんて」
「あ?あれだって語るっていうほど喋ってねえよ」
「30分以上も手について喋ってて語ってないってどんだけだよもう」

アルミンだって自分の知ってるお題に食いついたらずっと喋ってるくせに、オレだけ責められるのは腑に落ちない。
アルミンが言っているのは先日の休息日前の夕方の食堂で集まって話をしていた時のことだろう。その日は久々の休み前ということで普段より雑談が長くなっていて、どうしてだか手の形の話になったんだ。確かクリスタが男の人の手って大きいよね、私手が小さいからブレードの取手を握るのが最初辛かったんだって話からそれぞれの手の大きさの話に流れて。んでオレがこの中で一番手が大きいのはベルトルトだよなって話し始めて。…そっから確かに長々話してたような気がする。
「ベルトルトの手は身長に比例して大きいから威圧的にもなるけど、ベルトルトって身長高い割に威圧感を出さないように気をつけてるところあるから、それが手にも出てるような気がする。大きく振りかぶったり素早く手を動かすって事をいくらか自制してるところがあるよなって。だから今のベルトルトの手は優しい感じがするな。
大きな手っていうのは普通の手より多くのものを守ることも出来るし、使い方によってはちゃんと優しい手にもなるけど、力を奮おうとすればより強大な武器にもなる。
オレは今のベルトルトの手がいいな」
オレがぽつりとそう言うと、ベルトルトは自分の手を見て何か考え込むような顔をした気がする。
「ほーう、エレンはそんなに皆の手を見てるのか。特に感想持つほど手とか見たことなかったな」
考え込んで何も言わないベルトルトの代わりにライナーが発言した。
「ああ、なんか癖なのかな。そういえばライナーの手はがっしりしてて兵士の手って感じだな!力強く、味方を鼓舞する手。ミカサは戦士って感じだけど。」
(むしろ下手な歴代の戦士よりすごい雄々しい手をしている気がするけどとアルミンは頭によぎったが口に出したりしなかった)
「アニはファイティングポーズとった時に思ったんだけど、格闘家の手だったなってそん時気付いたんだよ。手で殴る訓練をしてるから、拳の隆起が普通の手より平坦になってるんだ」
そう言うとアニは驚いて自分の手の甲を眺めていた。握りこぶしを作っても確かに拳の隆起が少なくなっている。そんな話をしていたら近くで聞いてた数人も自分の手はどんな感じ?とまるで診断や占いを待つかのような盛り上がりになって、面倒になって話を切り上げたんだった。
そういえばあの時ジャンはちょうど居なかったな、と男らしく節くれだった白い手の幻視を見ていた事を思い出した。


ついつい手元を覗きこんでしまうが、洗濯での件があってから直接ジャンと突っかかって喧嘩することは殆どなくなってしまった。どうやらオレが手を見ている事に気が削がれて突っかかろうという気も無くしてるようだ。オレとしてもアイツと目が会うなり喧嘩したいと思ってるわけじゃないからどうということは無いんだけど、胸ぐらつかむにしてもジャンの手が触れる機会がなくなってしまった事にオレは静かに落胆していた、みたいだ。

というのも実は今現在、ジャンの手の目に見える範囲が狭くなっている。白い包帯の所為で、大きいのにどことなくほっそりとしている男の手の肌が大幅見えなくなってしまっていた。見えていたならまだしも、どうやら緩慢的なジャンの手不足?(変な表現だがこれが一番しっくりくる)らしい。少し前まで見て満足してたのに、見れない所為で悪化してとうとう触ったり握ったりしたくなってきたのを必死に我慢してる。
ジャンは昨日、立体機動の基礎練習で行われるロッククライミングでの闇討ち-命綱の抜き打ちカットのことだ-を受けてヘマったらしい。受け身の体制を失敗して岩肌の尖ったところで利き腕を深くえぐったジャンを見て、オレはらしくなく血の気の引く気分になった。止まらない血を見るのは誰だって気分がよくなるわけないだろうけど、怪我が起こりうるのは兵士として当たり前なんだから、他人であるオレが怪我した本人より動転するのは変なことだってオレ自身も思う。
それでも、オレはショックだった。
オレはふらふらとジャンに近づき、無言でジャンの怪我していない方の腕を掴んで教官の許可を貰い、一緒に救護室に向かった。
「なんでお前が死にそうな顔してんだよ」
ずっと黙ったまま目も合わせずに淡々と傷の処置をするオレに耐え切れなかったのか、軽い口調でジャンは言った。多分、わざと軽く言ったんだろう。あんまりにもオレが重々しい空気を出していたから。
「知らねえ」
「知らねえってこたねえだろ。自分の事なのに」
「自分のことでも知らないことばっかだ。こないだも他人の手ばっかり見てる癖持ってるとか、アルミンに言われるまでわかってなかったし」
「うわ、本気で気付いてなかったのかよ」
「うっせ」
「…そんなにいいモンなんかね、オレには普通に見えるけどよ」
ぽつりとジャンは傷ついた手を見ながら言った。
「あ、別に解説しなくていいからな。アルミンからオレのいないところで皆の手について延々語ってたって聞いたから。そんな自分の腕のこと詳しく知りたい訳じゃねえし」
「そんなに喋ってねえよ!」
それに、なんとなくジャンの前でジャンの手のことを話すのは気恥ずかしい気がしたから、喋りたくない。
「…別に大事にしろだなんて思ってないけど」
ジャンは無言でオレの言葉の続きを待った。
「下手打って怪我するのも馬鹿らしいだろ。そんな馬鹿に、なるなよ。バカジャン」
「…お前けなしてんのか」
調子が出ないみたいに曖昧な溜息をついたジャンは、なにか言葉を飲み込んだような気がした。

本来の肌の白さと反する無機質な白が肌を覆っていて、オレはすぐにでもそれが外れてしまえばいいのにと思った。
一日明けた今だってそうだ。怪我したことがショックなのか、見れないことが耐えられないのか自分でもわからないけど、集中するべきことが無い時はずっとジャンの手のことを思い浮かべてた気がする。自分でもわかってたけど、周囲はもっと異様に見えてたんだろう。たまりかねた様子で夕方消灯前にジャンから呼び出された。

「…そんな目で見るなよ、あー…その、怪我しねえようにすっから。特に手な」
「…なんだよ。オレ何も言ってないだろ」
「うっさいんだよ、その、お前の目が…ああ、誤解すんな!一切見んなって意味じゃねえ!だからそんな顔すんじゃねえって」
「そんな顔ってなんだよ。自分の顔見れねえ」

オレがそう言うと、ジャンは言いにくそうに目を逸らしてぽつりとこぼした。

「目が溶けそうになってる。泣くな」
「泣いてねえ」
「まだ涙はこぼれてないけど、ギリギリじゃねえか」
「泣くか」

必死で押し殺しているけど呼吸はおかしくなってるし、目頭が熱くなってる気もするけど、そんなの気のせいなんだ。そういうことにして欲しい。
ギリギリと歯ぎしりしそうな気配を出してたオレが顔が見れなくてジッとジャンの手を睨みつけていたら、その手が動いた。
怪我していない方の手がオレの頭にぽんと音を立てて置かれた。オレの頬が一気に熱くなった。なんだこれ、なんだこれ?!

「…どんだけ好きなんだよ…」

ぽそっとジャンが何か言ったような気がしたけどよくわからない。それどころじゃない。オレも自分の反応に驚いていた。熱が制御出来ない。奇妙な高揚感と熱と何かが入り交じっていた。
ただ頭に置かれていたジャンの手がつい、と動いた。ゆるく髪をくしけずって指先が頬を辿る。そのまま手のひらで頬を包み込まれた。きれいな長い指が、白いたなごころから体温が伝わってくる。ジャンの手だって認識した途端、オレの身体はおかしくなった。
ポタって音がした。勝手に出てきた涙がジャンの手を伝って落ちた音だ。

「目ぇ溶けそ、飴玉みてえ」

そう言われて、一瞬目の前が暗くなった。何か瞼に触れたような気もしたし、その前に瞼が熱くなっていたから気のせいかもしれない。アイツの手が頬から輪郭をなぞってうなじに触れる。首筋を猫の様に撫でられて、オレは腰を駆け上がる快楽に耐え切れなくなってしまった。

「!おい…大丈夫か」

怪我したジャンの腕にすがるわけにもいかなくて、オレは腰を地面に打ち付けない様にとっさに太腿に力を入れる羽目になった。つい恨みがましくアイツを見上げてしまう。

「バカジャン」
「…お前、それやめろ。卑怯だ」
「何がだよ。わけわかんねえ。お前の手が悪い」
「それこそわけわかんねえよ…」

とりあえず頭を撫でてもらう事をねだって、その間どうやってこの唯の同期と言いづらくなってしまった同期に、オレの暴発してグジョグジョになった下半身をバレないよう切り抜けられるか、オレは必死に悩んでいた。
なんかもう、二重三重の意味で死にたい。巨人駆逐し終わるまで死ねないけど、いっそ消えてしまいたいのと好きな手に撫でられて昇天してしまいそうになっているのがごちゃ混ぜになってる。
誰か助けて。


:::
メモ

・エレンがモブの手をはたき落とす事件
 好意が全くない他人に対しては手がきれいだろうが汚かろうが問答無用で触れさせないエレン(無自覚)手フェチが発動するのはそもそも好意を持つ相手にしか発動しない 顔見知り程度だったら手すら見ない

・大好きな手
 調査兵団に入って憧れの兵士長の手に触れて感激 でも触れられて喜ぶけど、どちらかと言うと安心するという撫でられて喜ぶ子どもや犬みたいな感覚
 ジャンから触れられると息が上がる=興奮する=発情してる ジャンのみ 身体に手で触れられるだけで切羽詰まってるとイっちゃうくらい大好き

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