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O~必要不可欠要素~

ヲタクブログです。 絵は無断で持ってかないでください。 ついったーでも呟いてます→wataame1gou シブ垢→523874

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ハンター話続き



村人のジャンはただの気のいい青年というだけでなく、不思議な空気を持つヤツだった。
なんだかんだでハンター依頼をこなすためにそれなりに人付き合いをしてきた身だが、実はあまり他人と会話が弾む程人当たりのいい性格をしていない俺とずっと会話が続くのはアイツ自身とウマが合うのもあるし、アイツにそれなりに観察眼が備わっているからだろう。
話の誘導が巧みでするすると次の言葉を引き出されているのだと気付いたのは3度目の会話をよそから見ていたハンジの指摘を受けたからだった。

「おや、人見知りのリヴァイが珍しく会話弾んでるじゃないか。結構彼と話してるよね?」
「…お前に人見知りと認識されていたのが俺には意外だ」
「リヴァイ結構人見知りじゃん。私達には易く話しかけてるけど、実は結構自分から依頼を取りに行くってことしないじゃないリヴァイは」
「俺は自分で出向いて依頼をもぎ取る派じゃねえからな。依頼は俺の目的のついでだ」
「うーん、リヴァイはそうなんだろうけどさ、そういう意味では昨今のハンターらしくないよね君」

ハンジの言う「ハンターらしい」とは、今のハンターが自らの実力をギルドに認めてもらう為に盛んにクエストを受けている状態の事を言っているのだろう。いわゆるキークエストをこなし、ギルドの点数稼ぎをしてギルドからのハンターの認定、ハンターランクを上げる事に躍起になっている点を指している。

「へっ、名声なんてクソの役にも立たねえよ」
「んー、でも信頼がないとそれなりの依頼そのものを紹介されないけどね」
「自分の力量に合った依頼を受けるのが何よりだろ。別に切磋琢磨することを否定はしないが…自分の身を立てる、そのためだけにモンスターとはいえただ殺生するのは俺は好きじゃねえな」

ハンターである以上自分の装備の充実を目的に狩りを繰り返す奴もいる。装備を整える事はハンターを営む以上最重要課題であるのは事実だ。なにせ受けるダメージが随分と変わるのだから。
それも度を過ぎなければいいのかもしれないが、極端に一部のモンスターだけ狩り続けるのも、本来の種のバランスを考えればあまり良いものではない。
その辺りはしっかりとギルドが目を光らせているだろうが。

「それより…」

実はその時俺は少し困っていた。さっきハンジにも言った「自分の目的」にそった依頼が入っていなかったからだ。
シナト村にやってきた目的の一つは俺が村の近くにそびえる天空山で貴重な鉱石や薬草等を採取したかったからなのだ。
天空山そのものには立ち入る事を許されたのだが、それは最近暴れだしたという雷狼竜ジンオウガの狩猟を依頼されたからなので、装備がまだ不十分な俺にはそれと並行して採取する時間が取れなかった。
ジンオウガを倒す事は出来たものの、体力を削るのに時間が掛かり依頼をこなすことが精一杯で自分の目的をこなすことが出来ない。天空山は竜人族には聖域らしくそう滅多に部外者が立ち寄ることの出来ない領域な為、俺は珍しく歯噛みしていた。
どうやら竜人族でも滅多に天空山での依頼は出しにくい様だ。大型モンスター討伐以外の依頼がなかなか入らない。
そんな俺の様子に気付いたのもジャンだった。

「リヴァイさん、もしかしてお困りですか?」
「ああ、実はな。俺がこの村にやってきた目的の一つが天空山の物資の採取だったんだ。あそこには珍しい鉱石や薬草やキノコも生えているらしいんだが…モンスター討伐をしているとそれを採取する暇がない」
「あー、そうですね。あそこはそもそも立地する場所が特殊なんで他所では見当たらない変わったモノが結構沢山あるらしいですし、ウチラの聖域で滅多に奥まで人が入らないからなー…。よし、リヴァイさんはいつも討伐でお世話になってるし、俺が採取ツアーの依頼をしときますよ。リヴァイさんなら根こそぎ希少物資を持ってくなんてことしないでしょうし」
「本当か!!」
「わっ、」

あまりの嬉しさにジャンの腕を掴んでしまった。驚くジャンの顔にハッと我に返って手を離す。

「ああ、すまない」
「そんなにお困りだったんですね…すいません気づくのが遅れて」
「いや、そんなことはない。むしろこちらこそすまなかったな。恩に着る」
「いいえ、お役に立てて嬉しいです」

そう言って照れくさそうにはにかんだジャンに、俺は自分の体温が少し上がったような気がした。
(かわいい…ん?何だかわいいって)

「そういえばリヴァイさん、そういった珍しい物資に詳しいですね。ハンターの人って皆んなそうなのかな?」
「ある程度知識を持っているハンターも多いが、俺は特に調合屋もやってるからな。むしろそっちが本業なんだが…」
「え、そうなんですか!?薬屋さんってことですか?」
「ああ。といっても俺の場合研究と生産が半々くらいだけどな。俺は元々そういう生まれなんだ」

精確に言うと、そういう家に「拾われた」。生まれもわからないスラムで日々飢えていた俺を拾った養母が代々「魔女」として薬草を主に煎じて薬屋を営んでいた。女の盛りを過ぎて子供に恵まれなかった彼女は殊の外口の悪い俺を可愛がってくれて、その代々引き継いできた技術を俺に教えてくれたのだ。

「俺がハンターをやっている一番の理由はそれだ。新しい素材で新しい治癒薬を作ること、その素材集めがハンターに頼んでもまともなもんが集まらなかったから自分で取りに行ったってだけだ」
「それは…豪快な理由ですね」

そう言ってまたジャンは吹き出していた。俺は別に変なことを言ったつもりは無いんだが、ジャンはいつも笑うのだ。それもちっとも不愉快ではない。

「そうなんですか…古(いにしえ)の魔女は医者と一緒だったって、昔聞いたことがあります。そういう由緒正しいところだったんですね」
「今の世になっては『魔女』は忌み嫌われる存在になっちまった。…お前がそう言ってくれて、少し嬉しいよ」
「…アレだって、伝染病が蔓延った不手際を処理できなかった当時の帝が不当に技術者を吊るしあげたようなもんだと俺は思いますがね…それと技術の独占という目的もあったでしょうし」

昔に行われたという「魔女狩り」は当時の様々な問題が折り重なって行われた悪しき風習だった。当時を生きていないにも関わらず、当事者の役職でもないのにジャンは深い知識を持っているようだった。

「…お前と話せてよかったよ。『魔女』と名乗れない俺が『狩人』と名乗っている矛盾が他人になかなか告白出来なくてな」
「今の世の中、狩人が魔女を狩るなんて事はナンセンスですよ。言葉遊びみたいなもんでしょ」
「そうか。…お前面白いな」

屈託なく笑うジャンはやっぱり可愛かった。

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