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O~必要不可欠要素~

ヲタクブログです。 絵は無断で持ってかないでください。 ついったーでも呟いてます→wataame1gou シブ垢→523874

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悶々と考える狛枝。

やっと、いけるかな?後1話くらい?
ちょっと修正。
カムクラくんからの接触があった後、特に大きな変化はなく、比較的穏やかな日々が続いた。
僕は相変わらず日常の幸運不運であのプログラムを試していたし、ある程度コントロールの仕方を理解していったと思う。
けどやっぱり僕が居て、ただ平和なだけで終わるはずがなかった。

どうやら最近他国の研究機関からの接触が多くなっているらしい。もちろん僕らの未来機関には外交官として有能な人もいるけど、基本的に僕らの機関は研究者気質の人が大半というか、より良い環境で研究できればそれでいいって考える人も多くって、海外からよりいい条件を提示されてそっちに行ってしまう人もいる。それも結局は選択するのはその個人の勝手だと僕は思うのだけど、設立してしばらく経ったこの機関でもそれなりにお偉方がいて、そのお偉方としてはこの機関の質が落ちるような激しい引き抜きには警戒しているようだ。未来機関という名が力を持ちつつある現在、そのブランドにぶら下がろうと考える言ってしまえば僕にとっては本当につまらない人がお偉さんにもいるみたいで、そこら辺が最近は特に面倒なことになってきていた。

というのも、どうやら僕の幸運は世界規模で見ても珍しいらしくって、それを欲しがってる面倒くさい別の研究機関が出てきたらしい。…昔の僕ならどうでもいいと思って、元の所属機関に迷惑にならないよう先方にフラッと行ってきて、派手に不運を引き寄せて出先でポイっとされることが通例だったんだけど、どうやら相手さんはそれくらいはカバーしきれると自信満々なようで、ともかく僕を譲れと言い張って未来機関の交渉の人を困らせているという噂を聞いた。
でも実際のところ僕を囲える程の財力を持つには余程の覚悟が必要だと思うんだけどね。それこそ小国の国家予算規模の資金を注ぎ込んで研究の新事実を発見するという異常なほどの執念を持つ未来機関なら、僕を囲えるだろうけど。それに匹敵する執念を資金面で出せないと絶対僕の不運による破壊神っぷりで機関が破綻すると思うけどな。

やっぱりフラッと相手さんに行って、不運を引いて相手を懲りさせないといけないのかなとも思うけど。
多分、僕がそうすることを全力で反対しそうな奴が居るんだよな。それも僕が利用できないからとかいう理由じゃなくて、純粋に僕のことを心配して反対しそうな奴が。…僕も、昔みたいにわざと遠巻きな距離に置いていた周囲を振りきって動くには、彼は長く僕の傍に居すぎたし、近くに居すぎた。

正直に言おう。僕は自分のせいで日向くんを傷つけたり失望させたりするのがとても怖い。
日向くんは特に才能を持ってこの機関にやってきたわけじゃないけど、でも彼は僕らの心の大事なところをずっと守ってくれている、大事な仲間だ。日向くんは平凡だけど、僕らの側にいて、才能を持つ人間の苦しみを間近で見つめてきた。彼はあえて皆に壁を作らず話しかけたり接することで、僕らの心の緩衝材になってくれていた。僕は、僕だけはそんな彼を遠巻きに見ていた。
僕が側にいると、どんな人でも僕の不運に巻き込まれる。僕は、自分の才能を自覚したと同時に周囲から決して愛されるはずがないと知ってしまった。僕がいることで幸運が舞い込んだと喜んでも、しばらくすれば不運が訪れる。命にかかわることとか、それくらいの規模で何かあれば、その人自身が例え僕のせいじゃないと思っても、その人の周囲の人は必ず僕と縁を切れと忠告するはずだ。そしてそれは正しい。
中には僕が幸運持ちだと知って近づいた途端に不運に巻き込まれて僕に呪いの言葉を吐いた人もいる。宝くじの時とかお金が絡んだ時は特に酷かった。
だから僕はどんな時でもうっかり他人が僕に近づかないように振舞った。もう、他人を巻き込んで、そのせいで僕の心が傷ついてしまわないように。
それなのに、日向くんはそんなこと無視して、無理やり僕の側にやってきた。それどころか僕の側に誰か他の人を呼ぼうとすらした。
僕は怖かった。そんなことをしたら、今までの僕の努力は何だったのかわからなくなる。
こっちの都合も知らないでドスドス土足で人の領域に入ってくる彼が嫌いだった。だから僕達は頻繁に衝突して喧嘩したんだ。
…でも、気付けばその喧嘩も「僕に近寄らないで」から「僕が近くにいるのに他の人に話しかけないで」に変わっていた。気付けば僕は日向くんが傍にいるのを当たり前だと思っていたんだ。僕の注意は無意識に日向くんが連れてくる第三者へと移行していた。
…日向くんと一緒に居たいって、僕は無意識に願ってしまっていたんだ。

それに気付いた時、僕は愕然とした。そしてとても怖くなってしまった。
僕と何度も接触してくる日向くんに呆れて、今まで僕にまとわりついてきた人にやってきたように、遠回りに僕の悲惨な不運話をして近づかないようにしたんだ。…そのつもりだったんだけど、日向くんはその後もちっとも変わらなかった。僕は彼の鈍さに呆れてもう知らないと思ったんだけど、よく考えたらそれは逆だったんだ。僕の不運体質を知った日向くんは、このまま自分から離れたら僕が一生離れてしまうという事を知って、僕と一緒に居ようって考えてくれたらしい。以前よりむしろ踏み込んで僕の横にいるようになったのは、その話をしたのかきっかけだったと僕は後で気付いた。
本当に。
本当に、どこまで愚かな程お人好しなんだろう。僕と居たって、傷つくだけなのに。

考えてみれば、僕が居るとき日向くんは僕だけを相手にしていた。僕が第三者が近づくことを恐れたから。
日向くんは、何も説明しない僕を、何で信頼出来るのだろう。
僕は彼に不幸しか持ってこないはずなのに。

「決めた。反対されるくらいならいっそ日向くんに云わないで行こう」

僕が戻ってくるのは日向くんの隣なんだ。その場所を守るためなら、僕は僕の才能すら利用しよう。

「それに、今はコレもあるし。幸運と不運のコントロール、どこまで出来るか試させてもらうよ」

そういって僕は左腕のPDAに触れた。PDAはただ沈黙するだけだった。



「…君の意思は変わらないんだね」

僕は出発前に苗木くんと話した。苗木くんと仲の良い同学年の霧切さん伝で僕の今回の事を聞きつけたらしい。霧切さんも苗木くんの口の堅さを見越して告げたんだろうけど、このタイミングの良さ…やっぱり苗木くんの幸運は恐ろしいほど冴えていると思う。
苗木くんという存在も、実は僕にとっては怖い存在だった。彼は確かに不運に巻き込まれるけど、決して諦めない不屈の精神を宿している。とっくに最初から諦めて絶望していた僕と真逆の存在、それが苗木くんだった。僕にとって、苗木くんがその立場に立っていながら前向きに物事を考えること自体が理解不能だった。多分、彼とは一生その価値観を分かち合うことはないと僕は思う。…少なくとも、僕に僕の才能がある限りはね。
僕にとって才能は絶対的なもので、自分の努力でどうにかなるものではないと、運命によって決して逃れられないものだと思っているから、そんな才能を持っている僕が―こんな自分で自分の才能すらコントロール出来ない僕が価値のある人間だと思えない。他者に幸せをもたらす事ができない存在、それが僕。人は幸せを追求し生きていくのに、そんな不安定な人間が居て、この世界になんの意味をもたらすだろう。僕は世界にとって限りなく無価値だ。いや、無価値などころか、厄災しかもたらさない。幸運を引き当てることもあるけれど。
でも、苗木くんは自分の才能-というより、自分自身を信じているからこそ前向きに物事を考える事が出来る。自分自身を信じられるバックボーンを持たない僕には、一生理解できない事だと思う。
でも僕自体には彼という存在がこの世に存在することは、結局どうでもいい事だとも考えている。世の中には、自分の世界観で測れない存在がいる、そのことを学んだだけだ。
僕がそんなつまらない事を考えていると、苗木くんは言葉を続けてきた。

「ねえ、本当にそれでいいの?彼に伝えないままで」
「…何のことかな」
「きっと、ものすごく後悔するよ。誰だって、いつなんどき想いを伝えられなくなるかわからないんだから。人がいつ死んでしまうかわからないのは、君だって知ってるよね?変化するのが怖いっていうのもわかるけど、それだと前にも進めない。想いが停滞するだけだ」
「…それでも、僕は、彼とただ一緒に居たいだけなんだ。僕にはそれだけで十分」
「本当に?」

「想いに溺れて苦しんで、それで満足なの?」

苗木くんの言葉が、突き刺さった。でも僕は振り返らずにその場を立ち去った。

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