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O~必要不可欠要素~

ヲタクブログです。 絵は無断で持ってかないでください。 ついったーでも呟いてます→wataame1gou シブ垢→523874

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元ネタはイソップ物語だったはずなのに原型留めてない。




とある深い森の中、一匹の狼がふらりふらりと歩いておりました。
狼は長く獲物を口にしていないのか、飢えて今にも倒れそうになっています。
そこへ通りすがった狐が声をかけます。

「おい、お前。腹が減ってるのか」
「…見てわかんねえのかよ」

随分と口の悪い狼は、飢えているにも関わらずギラギラと力強く輝く金色の目を狐に向けます。普段は狐を食べない狼も、背に腹は代えられないと思い直そうとしましたが、それより早く狐は軽々と木の上に登ってしまいました。

「鈍間な狼だな。失礼にも声を掛けてやった俺を喰おうとしただろお前」
「うるせえ…こっちは死にそうなんだよ…」
「皮肉なもんだな。森の王者だった狼が死に絶えそうになってるなんてな」

そういって狐はくるりと周囲を見渡しました。決して小さくはないこの森は狼を頂点としたヒエラルキーが昔から形成されていましたが、今や無粋な横槍のせいでそのバランスも崩れ去りそうになっていたのです。

「くそ…よそ者がちょっかい出ししやがったせいで、森も昔の力を削られた…人間とかいうクソどもを駆逐するまで…死ねない…のに…」
「…」

そう言って、狼は限界まで身体に鞭打っていたのでしょう、気絶して倒れてしまいました。


狼が目を覚ますと、そこはあばら屋の中でした。鉄で作られた大きな檻の中に閉じ込められており、狼は空腹も忘れて怒り狂いました。感情のまま檻に体当たりしていると、何者かの気配を感じます。
檻の向こうを見ると、狐が居ました。餌の入った木製の餌入れを口に加えて運んできました。

「テメエ、家畜だったのか!!!」
「ただの家畜がこんな器用に物を運べるかっつーの。俺はただ協力してやってるだけだ」

飄々と言う狐に狼は暗闇の中でも爛々と輝くギラついた目を向けます。

「大丈夫だ、っつってもお前は納得しねえんだろうな。ほれ、半分は俺が食うから。毒は入ってねえよ。少なくともこれを調達してくれた人間はこの森にくるゲスどもとは違うからな」

そう言って狐は先に餌入れに口先を突っ込みました。むしゃむしゃと食べて食休みをし、残った分を檻の下側の狭い隙間から容器ごと押し込みます。

「お前はここに来る人間どもを駆逐したんだろ?だったらここで飢える訳にはいかないだろ。そんなことしたって、下手すりゃ死骸が人間に見つかって毛皮を剥ぎ取られるだけだ。悔しいだろうが、今だけだって割り切れよ」
「…」

そう言うと狐はスタスタと部屋から出て行きました。

水を渡すのを忘れていたと狐がまた部屋にやってきた時にはその餌入れは空になっていました。
不貞寝するように檻の奥の隅で身を横たえていた狼を見て、狐はこみ上げる笑いを抑えられませんでした。


夜更けになって、狼はその身を起こしました。
腹が満たされた今、条件は揃いました。狼は嫌々ながら身体を震わせ、その身を変形させていきます。
狼には秘密がありました。
それは先ほど少しだけ話した、森の力の一つ、森を統べる一族に備わる変身の力でした。
狼はその肉体を人間に変える事が出来ました。しかし人間に憎しみを覚えた今、その姿に変えるのはなるべく取りたくない手段です。
けれども人の作った檻から逃げ出すには狼のままでは不都合極まりありません。
これも今だけだ、と狼は誰に言い訳するわけでもなくひとりごちます。

器用になった指先で鍵をなんとか外し、人型になった狼は外に出ました。
あばら屋は湖畔の近くにありました。月明かりが煌々と照らし、狼の姿を照らし出します。
生まれたままの姿の狼は、銀掛かった黒髪と鋭い金眼をさわりと光らせ、その身を狼に戻そうとしました。

「よう」

突然の声に狼は驚いて振り返りました。あばら屋の壁に背をもたせ、青年に近い年頃の少年が立っていました。
狼はその姿を目に入れた途端、少年に襲いかかりました。それを見越していたのか、少年は身軽に近くの木に駆け上り、「落ち着けよ」と声を掛けてきます。

「お前頭に血が上りすぎだ。よーっく見ろよ」

少年の頭には見覚えのある亜麻色の大きな耳が揺れていました。
その髪の色と目の色は狼に餌を持ってきた、口の減らない狐と同じものでした。


「なんだ、お前も森の一族の代表だったのか」
「俺の一族は俺以外全滅したけどな」
「…」

ジャンと名乗ったその狐は、木の枝に腰掛けたまま狼に話しました。
この森には変わった毛色の狐がいる。その噂が広がり、密猟しようとよそからやってきた猟師が押し寄せたのは数年前のことでした。
元々は自然の力が強く、また古から信仰を集めたこの森はそう安々と人の力に押される事はありませんでした。
しかし当時最も力を持っていた狼の一族が数十年置きに行っていた「旅」の時期と重なった事と、森周辺に毒を撒き散らす等手段を選ばなかった卑劣な人間の所為で、ジャンの一族は絶滅の危機に追いやられたのです。
そして一つの生物が極端に少なくなれば、どの生き物にもその派生は及び、森全体がその立て直しをしようと必死なのでした。

「…いや、もしかしたら俺以外にも一族の奴がいるかもしれないんだけどな。でも、俺はもう森に受け入れてくれない存在だから」
「そんなこと、」
「森が俺に答えてくれない。それが一番の理由だ」
「…」

本来森の一族であれば、森の声が聞こえるはずなのです。昔はジャンも囁くような森の声が聞こえていました。しかし、人間からの襲撃を受けて、人の手に落ち、森から連れ去られてからはその声が聞こえなくなりました。

「本当は、こんな俺がお前みたいな森の一族に接触するのもルール違反ってわかってるんだ。それでも俺は、俺達を絶滅に追いやったクソ共がまたこの森を狙ってるって聞いてジッとしていられなかった」

そう言ってジャンは真っ直ぐその顔を正面に向け、狼はその月明かりに照らされた横顔を見ました。

「俺に協力してくれないか」

ジャンの目を見つめながら狼は答えました。

「エレンだ。俺の力の及ぶ範囲で手を貸してやる」



それからエレンと名乗った狼と狐のジャンは、森の寝静まった時間に連絡を取り合っていました。
二人が待ち合わせるところは様々でした。エレンには優れた耳がありましたし、ジャンもエレンが気付いた時には近くにいることも度々あります。
姑息な密猟者たちを出し抜くように狼と狐はそれぞれどこに仕掛けがあっただの、どこで狩りに合いそうになっただの伝え合いました。
そしてそんな日々が片手で数えるほどになった時、それは起こりました。

今日はやたらと森が騒がしいとエレンは少し気が立っていました。
昨日も一昨日も獲物を捉えようと森をさまよっても野うさぎの穴も空でどこにも居ません。
鹿一匹すらその勘を尖らせ慎重に過ごしているのでしょう。
昔ならどんなに相手が警戒していようと、数に相対して必ず姿を見せていたのに見つからないのは、純粋にその数が減っている証拠です。
無闇矢鱈と狩りを行う愚か者は全てを殺戮して野垂れ死にしてしまうのが自然の摂理なのに、意地汚い人間どもめとエレンは虚空を睨めつけました。

すると、湖に近寄る人影を見つけました。その手には何か瓶のようなものを抱えており、嫌な予感がしたエレンは水際に入らないように反対側に向かってその人間に体当たりを仕掛けました。
人間は数人いて、体当たりを食らった人間はヒィッと情けない声を出しました。その横に居た人間が「上等の獲物だ!毛皮を取るぞ!!あまり傷をつけるな!」と叫びました。
むやみな殺生は狩りを行う上で愚かな行為だとエレンは教えられていましたが、ここで加減をするのはむしろ危険なことなのだとわかっていました。
命のやりとりに手加減など出来ないのです。手を抜けば自分が狩られる。それは正しいことでした。

エレンは最初に押し倒した人間の腿に噛み付きました。それから立ったままの人間たちをすり抜けつつ主に足を攻撃しました。その中の人間が「クソッ」と悪態をついて手に持った長い筒状の物をコチラに向けようとしましたが、その手に噛み付き回避します。その時別の人間からも同じものを向けられている事にエレンは気付いていませんでした。

軽い爆発音がしました。
その音の元を見ると、片腕を上に向けた小柄な男性が立っています。その上空には木々の枝に紛れて色のついた煙が上にと登っていました。

「おい、クソ共。ここを誰の領域だと思って狩りをしてやがる」

その男性の反対側の腕にも、人間たちが持っていた筒状の物がこちらに向けられています。正確には人間たちに向かっていました。エレンはすぐに人間たちからも男性からも身を遠ざけ、間合いを取りました。人間たちにはすぐに飛びかかれる程度の距離です。

男性の首元には、狐のジャンがすがりついていました。

そこから後はすぐに話がつきました。仲裁に入った男性と似たような格好をした人間が次々現れ、密猟者たちを捕まえていったのです。
エレンは人の集まったその場から逃げ出し、夜皆が寝静まった頃にやってきたジャンに事の顛末を聞きました。

密猟者達が湖に放り込もうとしていたのは毒でした。すぐに致死量に至るものではなく、上のヒエラルキーに行くに至って毒が溜まっていくというものです。彼らの目的はエレンの様な大型の獣の毛皮でした。
以前森にもたらされた毒は劇薬だったのですが、周辺住民にも被害が及び、人間の世界からも密猟者は憎まれる存在となっていたのです。
前回はその犯人たちの全ては捕らえきることが出来ず、今回もまた似たような手口で残党が猟に来ていたのが今日の出来事の顛末でした。

「人間でも人間を憎む奴がいるんだな」
「あっちはあっちなりに複雑らしいぜ。一族を皆殺しにする奴らもいれば、毒を盛られて瀕死になってる獣に涙して必死に助けようとする奴もいる。…俺は、人間を憎めばいいのか、わからなくなっちまって森に嫌われたのかもな」
「ジャン…」

月が照らす湖畔で人型になったジャンはその豊かな尾をゆるりと揺らしました。エレンは堪らなくなって後ろからそっとジャンの背に抱きつきます。

「エレン、ありがとうな。お前が体当りして止めてくれたおかげで毒がまた広がるのを防げたし、有力な証拠にもなった。俺も結果的に敵討できたしな」
「そんなの、当たり前だろ!」

エレンはジャンの顔を覗き込み、片手をジャンの頬に包み込むように当てました。

「なあ、ジャン…俺…」
「あのさ、エレン…森は今、俺のこと憎んでるかな」

自分の言葉を遮られたことに少し眉根を寄せたエレンですが、それに続くジャンの言葉にすぐ真顔になり、耳をそば立てました。
さわさわと森がさざめきます。

「…憎んでないってさ」
「そっか。それだけで…うん、ありがとうなエレン」

そう言ってジャンはスルリとその身を抜いてエレンから離れていきました。
エレンは慌てて言います。

「ジャン!俺、お前の事待ってるから!むしろお前がどこ行っても捕まえるからな!俺達狼一族はまた旅に出るんだ!!」

「ばーか、誰がわざわざ鈍間な狼に喰われるのを待つかよ!」

そう言って、ジャンは宵闇の中に消えていきました。去っていくその足元には涙の跡のような水滴の跡が残っていました。

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