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O~必要不可欠要素~

ヲタクブログです。 絵は無断で持ってかないでください。 ついったーでも呟いてます→wataame1gou シブ垢→523874

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パーティが行われたその日、会がお開きになって日付が変わって数時間しか経っていない深夜にリヴァイはホテルを出てとあるところへ向かっていた。

国内で有数の大企業、スミスグループの一つに連なる製薬会社の、主要な研究室となる一室に彼女はいた。使い込まれてヨレヨレになった髪ゴムでひっつめた髪は洗わなくなって1週間くらいだろうか、ギトギトを通り越してぺったりしている。それとは逆にランナーズ・ハイの様に高揚した様子で目は爛々としていたメガネを掛けたその女史はラボの最高責任者でもある、名前はハンジ・ゾエという。

「ハンジを借りるぞ」

研究室に来るなりリヴァイはそう宣言し、「相変わらず急だなーリヴァイは」とのたまうハンジを引っ張って別室の応接室へと向かった。ぺっと掴んだ手を離して握っていた己の手をウェットティッシュで拭う。

「酷い、容赦無いなあ」
「文句を言うならまずその汚い身体をどうにかしろ。そんなになるまで放置できる感覚が俺には理解できん」
「あはは、あとちょっと区切りが出来たらって思ってたらさー、ついつい」
「モブリット、コイツに餌与えるだけじゃなくてシャワールームにも押し込め」
「その前にまず寝てください…」

どうやらいつにも増して研究が絶好調だったようだ。アイデアが湧き出した時の熱中ぶりは研究者として随一なのだが、いかんせん人間の生活水準は著しく落ち込むほど後回しにしがちなのが玉に瑕だ。

「それでもまあちょうど集中切れちゃったし、リヴァイGJ」
「お前は何様なんだ…ったく。…エルヴィン、繋がったか」

タブレット端末から回線をつないで自宅でくつろいでいたエルヴィンとも顔を合わせる。

『やあリヴァイ、お前がこうしてわざわざこんな時間に私達を呼び出すのも久しいな。また何かするのかい?』
「ああ。ガラスの靴を解析して貰いたい」
『「…」』

「言っとくが、比喩だからな」とリヴァイがすかさず言うと、二人は騒ぎ始めた。

「リヴァイが気障なこと言ってる!なにこれ気持ち悪い」
「今のお前に言われたくねえ。物理的な意味で」
『まさか…本当にOne in a millionを見つけたのか!?おめでとうリヴァイ!それで君を袖にするほどのサンドリヨンはどの娘なのかな?リストはあるぞ!』
「リストか…残念ながら必要なのは招待客のもんじゃねえ。ホテルの従業員のものだ。それもどこまで辿れるか…」
『どういうことだ?』

リヴァイはかいつまんでジャンとその夜の事を説明した。

『…色々と言いたいことはあるが、元々焚き付けたのは私だからそれは言わないようにする。しかし、その子は本当に信用出来るのか?』
「お前に昔何度か言ったあの夢物語が関係していると言えばわかるか?」
『そうか、その子もお前の”お話”に登場していたのか』
「ああ…ちっとも変わってなかった。クソみたいに真っ直ぐなところとかな。似合わねえ黒髪に染めやがって、俺のところに来るまでに”昔”の馬車の中と同じ様に怯えたんだろうな」

簡素な変装をして怯えたように顔を伏せた馬車の中の少年、その風景は特に印象に残っていた。
リヴァイは度々不思議な夢を見ることがある。それは”何か”に追われる場面だったり、誰かを恐喝しているところだったり、内容はよく覚えていないけれど胸糞悪い裁判の途中だったり様々だった。それらの意味するところは結局のところリヴァイには理解できなかった―なにしろ理解するほど情報量もなく、取り留めもない場面ばかりであったから―が、それでもその夢は彼にとって有益なものだった。
それは夢の中に出てくる人物が、時たま現実で出会った実在する人間と一致する事があったからだ。
どうやら夢の中で見ている…いや、リヴァイが”覚えている”部分は特に人物の人格や性格をよく現した場面が多かった。孤児からアンダーグラウンドへはぐれて自分の腕っ節だけで生きていた頃から危険な目に合いそうになった時、夢の中で見た悪人には徹底的に警戒し、仲間であったであろう人物に似た人間だけは比較的素直に信用していた。そしてそれらは大体夢の通りで、外面は完全に一般市民の顔をした人物でも性格のねじ曲がったところを夢で見ていた人間は後でリヴァイを利用しようとしたり、裏切ったりしようとした。逆に一度でも仲間として信用していた場面を見ていた人物はどんな悪人面をしていても芯の通ったところがあったり信頼を置くに足りる人間であった。そしてその力の行き着いた先が、今のスミス財閥への抜擢である。
人を見る力を持つアンダーグラウンドの有名なゴロツキは、その噂を聞きつけてやってきたエルヴィンを一目見るなり彼の差し出した手を取ったのだ。


『リヴァイ、お前がそこまで詳細に覚えているとは、その子はよっぽど”前”のお気に入りだったんだろうな』
「ああ…おそらくな。…ジャン、”今度こそ”幸せに…」
『どうしたんだ?』
「?いや、なんでもない」

後半は誰に聞かせるつもりでもなく、無意識に零した言葉だったのだろう。問い返されてリヴァイは己の言葉の意味を理解していないようだった。

「リヴァイの”先見の目”で見てたんならその子は大丈夫なんだろうね!ただ、話を聞くと今の彼の周りの環境は最低最悪みたいだけど」
『ああ、裏稼業でしかも男相手の枕仕事にすら耐性があるようだったからね。今すぐ灰の中から引っ張りだしてやらないと』
「それとアイツに手を出したクソ共を全部削いでやる…。
とにかく、今ある情報が”仕込み毒”の風習とその位置、それと孤児を利用して裏稼業させている”孤児院”の特定だ。今回俺を仕留め損ねたからな、”処分”が済まされていなければいいんだが」
『だからこんな時間なのか。ずいぶんせっかちだなと思っていたんだが』
「悪いが今夜はお前らを眠らす余裕はない」
『美女に言われたいような言葉だね』

つまらない切り返しをしたエルヴィンにリヴァイは冷たい舌打ちをして一旦通信を切ろうとした。そのタイミングでエルヴィンから一つ確認の言葉を落とされる。

『リヴァイ、”孤児院”があると考えた理由はなんだ?そしてそれに繋がる手がかりは他にはないか?』
「一つは俺が昔聞いた質の悪い噂だ。孤児を集めてろくでもない労働をさせる院もあるくらいだからここはマシだろというクソくだらない脅し文句をガキの頃に聞いた。あの頃は本当か疑わしいと思っていたがな。それとジャン…あいつに俺がサンドリヨンと呼びかけた時に灰かぶりをわざわざ孤児と表したからだ。アイツ自身が本当に孤児だから無意識に重ねあわせたんだろ。
あとは、アイツが持っていた得物…ナイフを気づかれない様に見た時、柄に丸を描いた紋章が入っていたな…蛇がモチーフで珍しいものだったから覚えている」
『円を描いた蛇と言ったらウロボロスの輪だろうか…確かに紋章としては珍しいな』
「それくらいだ」
『わかった、コチラでも何か判ったら連絡するよ』
「頼む」

エルヴィンとの通信が切れて、リヴァイはハンジへ向き返った。

「私はその仕込み毒に適しそうな物質の目星と入手先の割り出しかな?」
「ああ。自滅用は最終手段だが、その次に必要なのが証拠隠滅だ。死体から足がついては元も子もないからな。毒がその存在を簡単に判別出来ないようなものを選ぶか、逆に入手ルートが多すぎてどこから手に入れたのかわからないものにするか、どちらかだろう。
そしてこれは完全に勘だが、アイツの場合は前者だと思う。クソみたいな話だが、紛争が多く孤児の溢れるこの国で子供の入手が比較的容易い中、アイツがすっかり成長しているのがその理由だ。鉄砲玉にするには子供が成長するほど時間が立っているということは、使い切り時期をアイツは生き残ったということ、そしてそれだけ生き残った逸材の首輪は摩減の激しい安物の毒は危険すぎる。おそらく長く生き残った時点でアイツの仕込み毒はより複雑なものに入れ替えられているだろうな」
「だからそこを逆手にあの子の”孤児院”を特定する、ってわけだね。仕込み毒の箇所と他の口内の施術痕は覚えている?」
「ああ、ここと…」

そう言ってリヴァイはタブレットに表示された人体モデルの箇所を指で示した。

「わかった、任せてよ!口内で含む形ってのはポピュラーだけど、設置の仕方とかでずいぶん毒も限られてくる筈だからある程度絞れると思う。
んふふ、リヴァイのお姫様かー、どんな子なのか今から見るのが楽しみだよ!待ってなさい」
「…お前に見せると減る気がするが」
「酷い!減らず口!」
「だが、頼む」
「ん、任せて」

そうして夜は更けていった。

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