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O~必要不可欠要素~

ヲタクブログです。 絵は無断で持ってかないでください。 ついったーでも呟いてます→wataame1gou シブ垢→523874

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 地下街の一角にあるとある屋敷に潜入した青年になりきれていない少年の名前はエレンという。彼は突如入った仕事で休みを返上させられたにも関わらず、身軽に音も立てず身体を動かしていた。エレン自身が仕事熱心でいつでも身体を動かせるように自己鍛錬していた賜物…というわけではなく、単純に一大イベントの日ということでエレンに構って欲しい幼なじみの襲撃を受けることに些か辟易していたが故の”逃げ”の姿勢を保っていた賜物だった。”仕事”という口実で幼なじみの襲撃を公に躱せた事の方が彼の心の負担軽減に役立つとは、とことん報われないものである。
 予め指定されていた暗がりに身を潜めていると、人の声が聞こえてきた。見張り番が戻ってきたようだ。囚人の様に乱雑に腕に抱えられていた青年前の少年は疲れ切った顔をして目を閉じていた。眠っているのか気絶しているのかわからない程度の疲労困憊の表情を顔に浮かべている。

「しっかし、ウチの所長は本当エグい趣味を持ってんなぁ」

 見張りの一人が思わずと言った風に口を開いた。もう一人の見張り番は慣れた様子で抱えた少年を部屋へ放り込む。

「へ、コイツが来るまでは所長は誰かれ構わずだったんだぜ。俺らみたいな『雇われ』じゃなけりゃあのジジイの琴線に触れるやつは可哀想な経験してたんだから、ガキどもはコイツに感謝してんじゃねえの?」
「うえっ、理解出来ねえな…ヤるにしても女の方がいいだろうによ」
「どうだかな。噂じゃ所長は勃たねえらしいし、女に碌な思い出ねえとかだったら笑えるな」

 そう言って少年に目をやった事情に疎い方の男は、言葉に反してしばし少年を見つめていた。疲れきった少年の襟ぐりは広く開いていて、口元がゆるいのか微かに開いた口からつるりとした白い歯が見えている。

「…先に忠告しとくが、コイツに手えだそうとか思うのはオススメしねえぜ。むかーし血迷ったバカがナニを削ぎ落とされそうになったとか去勢されたとか物騒な話しか聞かねえ」

 その言葉を聞いて男は一瞬顔を青ざめさせたが、すぐに「そ、それはおっかねえな…ホモペドの上に執着心が強いとか、コイツも可哀想に」と取り繕うように口走った。

 見張りの話を聞いて気絶した少年をターゲットと確認したエレンは、スッと男たちの背後に立ち、当て身を食らわせ気絶させた。部屋の隅で手足を拘束し、武器を取り上げる。そのまま部屋の隅のクローゼットに男たちを詰め込んで見張りと入れ替わる様に部屋のドアの前に立つ。万一中にいる人間が意識を取り戻した時の為ドアに鍵は掛けないままにする。
 待つことしばし、沈黙が続いた空間に第三者の足音が響いてきた。

「ご苦労様。構えを解いていいよ」

 廊下を歩いて来たのは金髪碧眼の美丈夫、スミス財閥の実質No.1と言われているエルヴィン・スミスだった。

「終わりましたか」
「施設そのものを揺さぶるのはすぐに終わったよ。今はリヴァイのリンチタイムさ」
「そんなに…リヴァイさんがコイツに執着するなんて」
「驚きかい?私より彼と付き合いが長い君が驚くなんてよっぽどだね。それで例の子はここに?」
「はい…!」

 すこし声が大きかったのかもしれないとエレンが後悔したのはその時だった。扉から腰を屈め低姿勢でタックルしてきた身体をとっさに半身で受け流し、突進してきた力を利用して床にひっくり返す。一瞬宙を待った肢体は線が細く、投げのために掴んだ襟は力に耐え切れず数個ボタンがはじけ飛んでいた。エルヴィンはすかさず倒れた少年の口に指を突っ込む。少年の奥歯近くには自滅用の毒袋があるのだ。

「安心して…と今の君に言っても信用出来ないかな。私の顔に見覚えはあるかい?エルヴィン・スミスという名は流石に知っているだろう。君がジャン・キルシュタイン君だね」

 一方的に名と顔を知っていた筈の対象から孤児になって以来誰にも言ったはずのない姓まで言い当てられ、ジャンは狼狽の顔を隠す事に失敗した。


 ジャンが意識を取り戻した時、かすかにドアの向こうから気配を感じた。予想通り”施設”に戻ったジャンに待ち構えていたのは今までに無いほど苛烈な施設長からの”躾け”だった。むしろ躾けという名の性的虐待で済んでいる事態に、施設長の今回の無理矢理な仕事の目的を理解した。任務失敗にかこつけて、性的被虐を回避しようと暗殺業務に身を浸していたここ数ヶ月のジャンの”反抗”を無に帰せようとしたのだろう。暗殺も出来ない不出来な子は生きていく為に権力者の寵愛が無ければいけない、とジャンの唯一使えていた翼をもぐことがこのふざけた茶番の目的だったのだ。
 俺は自分の命すら守れないのか。死すら自身で選べない様に、戻った途端に奥歯の毒袋は撤去された。悔しいほどに己の行動を見抜かれ、ジャンは久しぶりに悔し涙を浮かべ、絶望した。
 人形の様にただ犯されるままだった数ヶ月と比べて僅かなりに感情を取り戻したジャンに施設長は浮かれたように鞭を振るった。事実上機嫌だったのだろう、責め苦は常より長く、久しぶりにジャンは躾けの最中に気絶してしまった。

「クソッ、インポの癖に精力持て余しやがって…ふにゃチン一人で弄って独りで死ね…」

 金玉腐れろと小さな声で呪詛を吐きながらジャンは身を起こした。身体中の鞭打ち痕が痛む。久しぶりの被虐に夢中で下の様子まで気取られなくて済んだ事だけは幸運だった。”次”のスパンが長いといいのだが、それもどうなることやらと考えていると外の気配が動くのを感じた。そっとドアへ身を寄せる。
 その時ジャンはドアに鍵がついていない事に気付いた。これは…またとないチャンスだと身を潜め、聞き取れないもののお喋りに夢中になっている外の様子に、奇襲を掛けようと身を屈めて突進していった。



 奇襲に失敗したジャンは、あまりの展開の早さに目を回しそうになっていた。今夜一晩でどこまで事態がコロコロ変わるのやら、こんな経験はマルコが死んだ時にもなかったのに。
 今宵失敗したミッションに関わった標的の身内がここに訪れているということは、このクソ下らない施設に大きな変動が起きているということだ。今までずっと殺してきた感情が身体の下でうねって上手く制御出来ない。施設から解放されるのか、報復として己が彼らに殺されてしまうのか、出来ればあの黒髪の優しく抱いてくれた人にトドメを刺して欲しいな、といくらか吹っ飛んだ思考を垂れ流してジャンは己を拘束する男たちを眺めた。
 一人はパーティの時に見かけた顔、標的の義兄であるエルヴィン・スミス。そして四肢を拘束しているのはジャンと歳が変わらなさそうな少年だった。黒髪に猫のような大きな明るい色の目をした少年は悔しいことに目鼻立ちも整っているようだった。俺より小柄なヤツに放り投げられるなんて、暗殺業やってる身としては悔しさこの上ないとジャンは顔を歪める。
 ジャンの剣呑な目つきに気付いた少年―エレンは、コイツ血の気が多そうだなとその視線を受け流していた。どうしてこんなやつを気にかけてるんだろう?と上司であり己の喧嘩の師匠であるリヴァイの趣味を不思議に思っていると、その当人が廊下の先からやってくるのが見えた。

「おめえら何やってる」
「そんな剣呑な顔しないでくれ。不可抗力だ。いきなり第三者の説得を聞いてくれる状況じゃないのはわかるだろう?」

 毒の事もあったのに、とエルヴィンがごちるとジャンは驚きで微かに目を見開いた。

「有難いことに豚野郎はコイツの毒を撤去したらしい。飼い殺し目的だとよ。クソが」
「…ちなみにその施設長殿はどうした?」

 そう問いかけたエルヴィンの言葉にリヴァイは鼻で嗤って返しただけだった。おお、くわばらくわばらと唱えながらエルヴィンはジャンの口から手を引いた。ねちょりと唾液が線を引く。すかさずリヴァイはエルヴィンの身を退けてジャンの唾液まみれになった唇をひと舐めした。
 目を白黒させるジャンをよそにエルヴィンとエレンは目を背ける。目の毒にしかならない。

「エレンも手を離せ。俺が抱える」

 そう言ってエレンが身を離した隙に身を捩る間もなく言葉通りにリヴァイはジャンの身体を抱きかかえた。いわゆるプリンセスホールドである。そこまで姫扱いしなくても、と部外者の二人は思ったが、当事者はそれどころではない様子だ。ジャンは緊張で、リヴァイは逃さないという必死さで。

 この人、こんな表情も出来るんだなと驚きに満ちた顔でエレンはリヴァイを見ていた。
 エレンは10歳で両親を失い、ゴタゴタの間に人攫いに遭って地下街にしばらく身を潜めた事があった。その時似たような状況に居たミカサとアルミンと出会ってそれぞれ身を寄せ合いながら生きていたのだが、偶然絡まれたゴロツキ共を一掃したリヴァイの腕っ節に憧れ、持ち前の熱意でしつこく付きまとい押しかけ弟子となった。武芸の才はエレンよりミカサの方が数段上だったのは癪だったものの不断の努力でそれなりに負けなしの力を付けられたのはリヴァイのお陰だと今も思っている。地下街から地上へ”召し上げられた”時もリヴァイの出した条件でリヴァイの腹心としてミカサとエレンは度々裏で動く彼の手足となっている。そして策を練るのに秀でたアルミンはエルヴィンの元に引き取られ、養子として人の上に立つ術を叩きこまれているところで最近はその頭角を現してきているらしい。
 そんなわけでエルヴィンよりリヴァイと付き合いの長いエレンも、今のようなデレデレになった彼を見たことは一度もなく、話に聞いて信じられなかった事実がつきつけられて、お伽話みたいな本当の話ってこの世界に存在するんだと考えを改めた。

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